おもちゃばこ

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『八日目の蝉』感想

ネタバレあり

駄文ですが見て思ったことたちです。

 

誰が悪いのか

この物語の特徴的なところは、最大の悪人が主人公であるところです。

「不倫した上に不倫相手の子を誘拐した」というとんでもない凶悪犯が「世界にひとりの優しいお母さん」として描かれていることに、まずは良い意味で混乱させられます。

本来不倫とは、悪い女が既婚男性を誘惑して…と描かれそうなところですが、ここではむしろ、不倫相手がかわいそうな人間として描かれているのです。希和子は妊娠させられたのにうまく騙されて堕させられた挙句、子供の望めない体となりました。そのまま捨てられたも同然なのに相手側の家庭は幸せそのもの。

さらに、子どもの誘拐には悪意よりも「お母さんになりたい、子どもを誰よりも愛したい」という紛れもない母性や優しさが介在するのです。

 

5年の月日を経て恵理菜が本来の家庭に帰ってきてからも、どうしても家族がうまく回らないのは間違いなく希和子の誘拐により、大切な5歳までの時期を共に過ごせなかったせいでしょう。

それなのに、あくまで「優しい母」として薫を育てた希和子に感情移入してしまい、すぐにヒステリックに叫ぶ本当の母親や、責任を感じながらもどこか問題と向き合うことを避けている父親に、視聴者は良い印象を持てないのです。

 

不倫して子どもを誘拐した希和子、堕さざるを得なかった希和子を責め続けた本当の母親、全ての原因を作った父親、一体本当に悪かったのは誰なのでしょうか。

 

中島美嘉さんのdearが主題歌となっていますが、冒頭の「どうしてわたしがこんな思いをするの」というところが、いつも刺さります。

一体このセリフは誰のものなのでしょうか。

 

親の不倫によって事件の被害者となり、人生を翻弄され家族愛を知らずに育ってしまった恵理菜でしょうか。

それとも、夫の不倫やその相手による誘拐で我が子を奪われて当たり前の「家族」を持てず、さらにようやく戻ってきたその最愛の子までが不倫をし、「がらんどうになんかなりたくないから産む」と、過去に自分が誘拐犯に放ったセリフを浴びせられた母・悦子のものでしょうか。

はたまた、全てを失った悲劇のヒロインとして描かれている野々宮希和子のものなのでしょうか。

 

八日目の蝉って

「蝉って地上に出てきて7日しか生きられないんだって」「みんな7日で死ぬなら悲しくない。みんな死んじゃった8日目の蝉のがかわいそうだよ」

「8日目の蝉が見る世界って、他の蝉には見られなかった世界で、ぎゅっと目を瞑ってなきゃいけないほどのものでもないんじゃないかな」

 

題名の八日目の蝉に関しては、作中でこんなやりとりがされています。

 

普通ではない経験をした恵理菜の、普通ではない部分(希和子と小豆島で過ごした愛に満ち溢れた日々)のことを指しているのでしょうか。