おもちゃばこ

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『八日目の蝉』ネタバレあらすじ

ネタバレあり

ドラマも映画も小説もありましたね。ドラマは見れていないのですが、映画と小説で驚くくらい引き込まれてしまいました。いろいろ考えさせられるお話ですね。

 

文字を追うだけで光景がありありと思い浮かぶ、素敵な小説です。その脳裏に浮かぶ情景を裏切らない映画も最高で、何度も見たい映画です。

 

「優しかったお母さんは、私を誘拐した人でした」という目を引くキャッチフレーズとショッキングな内容。

 

主人公の秋山恵理菜は、生後数ヶ月で父親の不倫相手の野々宮希和子に誘拐されてしまいます。

希和子は、恵理菜の父の子を妊娠したものの、父に言われて中絶。その際に二度と子供を産めない体になってしまいました。そんなさなかに産まれた父の本当の娘、恵理菜の存在を知った彼女は恵理菜を誘拐してしまいます。

 

ところが彼女は、嫌悪感すら抱きかねない相手であるはずの恵理菜を、自分の子として育てます。ほとんど同じ時期に生まれてくるはずであった自分の子、薫と名付ける予定であったその子どもに恵理菜を重ね、誘拐した恵理菜に「薫」と名付けて、自分は宮田京子と名乗り、恵理菜を自分の本当の子ども: 宮田薫として育てます。

 

人に助けられてなんとか2人生活を続け、東京から名古屋、最後は小豆島へ。ここで2人の束の間の穏やかな生活が始まります。

しかし、ひょんなことから警察に居場所が知れ、5歳の薫の目の前で希和子は逮捕されてしまい、二人の逃亡生活は終わります。

 

突然優しかった母親と引き離された薫。母を奪った警察官たちに、そのまま東京に連れて行かれます。

そこで出会ったのは、「本当の家族」だという男女と小さな女の子。そして宮田薫は「秋山恵理菜」となって、初対面も同然の両親、妹とともに「当たり前の」生活を始めるのです。

 

両親、妹と4人で東京で暮らすというごく普通の生活のはずなのに、生まれてから5年間薫として生きてきた恵理菜にはうまくなじめませんでした。

どこまでも広がる海と山は消え去り、目の前に広がるのは黒いアスファルトと目まぐるしく動く人と車。「お母さん」はいなくなり、見知った世界が一瞬にして消え、突然できた妹に戸惑い、標準語が話せずに怒られ、恵理菜は居場所を見いだせずにいます。

 

大学生になった恵理菜は家を出て一人暮らしを始めますが、バイト先で出会った既婚男性と不倫関係になり、彼の子を妊娠してしまいます。

ちょうどその頃、恵理菜の誘拐事件の記事を書いているという女性千草と出会い、一緒に薫の生活した地を巡る旅をすることになります。

 

小豆島についた2人。きらきら輝く海と、青い山野。覚えていないようで、でも確実に自分があの人と生きた場所。

認めたくない、思ってはいけない、と気づかないようにしてきたけれど、心の奥底に潜む思い。「あの人とずっとあそこで生きていたかった。」

「恵理菜を誘拐した世界一悪い女」は、薫にとっては間違いなく世界に一人の優しかった「お母さん」でした。

そして、5歳まで過ごし、本当の祖父母のような人たちや友達に囲まれて遊びも覚えた小豆島もまた、薫にとっては全ての、そしてたった一つの世界だったのです。

 

「宮田薫」として生きた五年間は現実ではなく、偽りの家族と暮らした偽りの世界。でも恵理菜は、その時代が一番幸せであったことに、もう気づかないふりはできなくなっていました。

お腹の子を産もう、そして、大切にそだて、おいしいものを食べさせ、この世の綺麗なものを全部見せてあげよう。

小豆島の帰り道、泣きながら強い瞳で恵理菜はそう決心するのでした。