ダーズリー家との別れ
最終学年7年生となるはずの夏、ハリーは、ダンブルドアが遺した仕事(ヴォルデモートを倒すために分霊箱を探し出して破壊する)を遂行するためにホグワーツには戻らないと決心しました。
ロンとハーマイオニーも、この戦争の時代の中、家族と離れてハリーと一緒に行くといいます。
ところで、ハリーはこれまで両親を失ってから16年間ダーズリー家に住んでいますが、そもそもどうしてこんな虐待のような扱いを受ける家で暮らさなければいけなかったのでしょう。
魔法界のヒーローであるハリーを引き取りたい家ならたくさんあったはずなのに。
そこにダンブルドアの思惑がありました。
これまでの歴史の中でアバダケダブラ(死の呪文)を受けて死ななかったのはハリーただ一人。その秘密は、命を賭してハリーを守った母の愛にあったのです。愛の力はそれほどに強く、この力だけが史上最恐とされるヴォルデモートを打ち負かすことができました。
だから、その愛の呪文をかけたハリーの母親リリーと血を分けたペチュニア叔母さんのところを家としている以上、ハリーには保護呪文がかかった状態となりヴォルデモートも手出しができないようなのです。
保護呪文は17歳(魔法界での成人)の誕生日に破れます。
家の前で、保護呪文が破れる瞬間を待ち伏せされては手も足も出ないので、誕生日を迎える前にハリーを不死鳥の騎士団員の安全な家に移す必要がありました。
決行の日は魔法大臣にも知らせていましたが、どんどん力を増すデスイーターたちはついに魔法省までも手中に入れていました。
大臣が魔の手に堕ちたと知った不死鳥の騎士団は、急遽ハリー移送の決行日を変更して裏をかくほかないと判断しました。
煙突とか、姿くらましとか、移動の方法はたくさんありますが、魔法省の力を使ってデスイーターに見張られています。
結局原始的に動くしかないとのことで、騎士団13人が集まり、予定より早くに日を改め、箒にのってロンドンの空を飛んでいくことになりました。
マグルであるダーズリー家も危ないからということで、これを機に引っ越してもらいました。ハリーは成人になりますし、これでダーズリー家と会うことは二度とありません。
ひそかに日程変更した移送の日、どういうわけかデスイーターに日程変更がバレており、騎士団は上空へ出発した途端に大量のデスイーターに囲まれ追いかけられます。
大半はロンの家まで命からがら逃げ切ったものの、移動の間にハリーのふくろうヘドウィグとマッド・アイ・ムーディーは殺され、ロンの兄ジョージは片耳を切られてしまいます。
結婚式からの急な旅立ち
その後、無事移動を終えたハリーたちはロンの家にとどまります。数日後にある、ロンの兄ビルの結婚式の準備を手伝いながら3人はこれからの計画をたてます。
そこへ訪れた新魔法大臣スクリムジョールから、三人はそれぞれダンブルドアが各々に遺したという形見をもらいます。
ハリーは1年生の時、クィディッチのデビュー戦で初めて掴んだスニッチ(羽のついた飛ぶ球)を受け取りました。
スニッチは中が空洞になっており、スニッチを掴んだ者の手に触れると球が開いて中が見えるようになっているのですが、いざハリーが手にしてもスニッチはびくともしませんでした。
ロンには火消しライター(まわりの灯を出し入れできる)、ハーマイオニーは「吟遊詩人ビードルの物語」という子供向けの御伽噺の本を贈られましたが、3人はダンブルドアの意図が全く読み取れませんでした。
結婚式の最中、ついに魔法省は完全にデスイーターたちの手に落ち、スクリムジョールが殺害されたというニュースが入ってきます。
一瞬ののちにデスイーターたちが式に乱入し、ハリーたち3人は家族や友人たちへの別れもできないまま姿くらまし(その場からどこかに瞬間的に移動すること)してマグルの町ロンドンに逃げます。
流浪しながら分霊箱を探す旅へ
とりあえずカフェに入ってみたものの、ここでも客に化けたデスイーターに攻撃され、これ以降は場所を点々と移動しながらそのつど周りに保護呪文を張って暮らすことにします。
ダンブルドアととってきた分霊箱スリザリンのロケットはにせものにすり替えられていましたが、それの本物が魔法省に保管されているということがわかりました。
3人は魔法省の職員に化けて見事分霊箱を盗んでくることに成功しますが、分霊箱を手にしたはいいものの壊すすべもなく、今まで経過してきた時間のわりに計画もうまく進まないのでみんなだんだんと不機嫌になり、ついに喧嘩になって怒ったロンは出て行ってしまいます。
残されたハリーとハーマイオニーは落ち込む気持ちを抑えながら二人で旅を続けます。
ダンブルドアの形見の意味
そんなある日、ハリーがいくら触れても開かないスニッチを何気なくいじっていると、自分は一年生の時の最初のクィディッチの試合で、スニッチを掴んだのではなく飲み込んでしまったのだったと思い出します。
そこで、手で握るのではなくスニッチに口付けしてみたところ、スニッチは開きませんでしたが、かわりになんと文字が現れました。
「終わる時に開く」と。
中に何が入っているのでしょう。終わる時っていつ?これこそがダンブルドアからのメッセージなんでしょうか。
しばらく経ってロンが帰ってきました。
どうして移動し続けているのにここがわかったのかと問う二人に、ロンは、「ハリーとハーマイオニーが一度だけ僕の名前を呼んだ。その時、火消しライターからその声が聞こえて、光が現れてここへ導いてくれたんだ。」と言います。
ダンブルドアはやっぱりさすがだ、こうなることまで見抜いていたんだから、と苦笑しながら。
ロンが、なぜかテントの近くに落ちていたグリフィンドールの剣(分霊箱を壊す力がある)も見つけたので、その分霊箱を壊し、ついに残りは3つとなりました。
死の秘宝
ハーマイオニーはダンブルドアの形見の物語を読んでいましたが、内容よりも本に書き込まれた謎のマークが気になります。以前、ルーナの父親セノフィリウスが同じマークのネックレスをつけていたことを思い出し、話を聞きに訪ねて行きます。
どうやらこのマークは”死の秘宝”を表すもので、ニワトコの杖(世界一強力な杖)・透明マント(永遠に効果がうすれない)・よみがえりの石(死んだ人が生き返る)のことを指し、この3つを全て所有すれば、死を征服するといわれているそうです。
そこにはストーリーもありました。
「ペベレル家の三兄弟が旅していた。ある時三人が川に差しかかると、死が邪魔をした。三人は力を合わせ橋をかけて川を渡ったが、その事に腹を立てた死は、三人を褒めるふりをして、贈り物をするといった。
長男は世界最強の杖を要求した。死はニワトコの杖を与えたが、長男はそれを村中の人に見せびらかして自慢し、その日の夜のうちに盗人に喉をかき切られた。こうして死は長男を手に入れた。
傲慢な次男は、死を辱めようと、死者を蘇らせる道具を要求した。死は蘇りの石を与えた。
次男は石を使って死んでしまった婚約者を連れ戻したが、死者の世界にいた彼女はこの世界に馴染めず首をつってしまい、悲嘆にくれた次男も後を追った。こうして死は次男も手に入れた。
三男は謙虚で賢明だったので、死にみつからずに安心して暮らせるものが欲しいと言った。
死は渋々、自分の透明マントを与えた。
透明マントを着た三男のことを、死はいくら探しても見つけることはできなかった。
ある時、年老いた三男は、透明マントを脱いで自分の息子に着せ、古い友人として死を迎え入れ、ともに旅立って行った。」と。
あくまで神話だ、と主張するセノフィリウスでしたが、そのうちの一つである透明マントを所有するハリーは他の二つも存在する気がしてなりません。
そして、3つを所有すれば死を克服できるというのならば、何よりも死を恐れるヴォルデモートが、それらを探していないはずがありません。
これもダンブルドアからのヒントなのでしょうか。
マルフォイの館へ
ハリーたちは、これまでいくつもの場所に忍び込み、そのたびに毎回のように敵に追いかけ回され、辛くも逃げおおせてきましたが、ついに人さらいに捉えられてしまいます。
ハリーを狙うのはヴォルデモート一味や今やその手に落ちた魔法省の人間だけではありません。
ヴォルデモートのもう一つの目的は「穢れた血」(マグル出身の魔法使い)を皆殺しにすること。
そのために無作為に魔法使いたちをさらわせては賞金を払うという仕事をしていたため、賞金欲しさに魔法使いを捉えてデスイーターに引き渡す輩も多かったのです。
今回ハリーたちは、指名手配中の指名手配であるハリーとも気づかず、単純に人さらいをしているそんな魔法使いたちに捕まったのでした。
捕らえられた3人はマルフォイの館につれていかれました。
捕まった時にハーマイオニーが機転をきかせてハリーの顔を魔法で変形させていたので、マルフォイ家の人々はハリーが本物なのか自信が持てません。
今度こそヴォルデモートにハリーを引き渡して名誉挽回しようと躍起になっているマルフォイ家でしたが、二度の過ちは許されないと思い、自信がない中でヴォルデモートを呼ぶことができずにいました。
そこでちょうど休暇で家にいたドラコが、本物のハリーか確認しろと部屋に呼ばれます。
知り合いが見れば絶対に本人であることはわかるに違いないのに、ドラコは「わからない」と答え、どういうわけか、あれほど憎み合っていたハリーを守ります。
放り込まれた地下牢で、先に投獄されていたルーナや杖作りのオリバンダー、ゴブリン(グリンゴッツ銀行で働く小鬼)に出会います。
絶体絶命のハリーは、藁をもつかむ思いで、シリウスの遺品である鏡のかけら(シリウスが生きていた頃は、ここにシリウスうつり会話ができた。)に映ったように見えたダンブルドアの目に向かって助けを求めます。
すると、突然ドビーが現れ、地下牢にいた全員を助け出してくれたのです。
ドビーに連れられなんとかロンの新婚の兄ビルの新居へと姿くらまし(瞬間移動)しましたが、マルフォイ家を去る瞬間にベラトリックスが投げつけたナイフがドビーに刺さっており、ドビーは敬愛するハリーに看取られて死んでしまいます。
グリンゴッツ銀行破り
このころ、ヴォルデモートはダンブルドアの墓を暴いていました。
ダンブルドアの遺体はニワトコの杖を手にしており、ヴォルデモートはそれを取りに来たのです…
ハリーたちはビルの家で、次の計画をねります。マルフォイの館で聞いた会話から、グリンゴッツ銀行のマルフォイ家のスペースに分霊箱のひとつがあるのではないかと疑います。
ゴブリンに手伝ってもらってグリンゴッツ破りをすることに決め、ある朝3人はついに居心地の良い家を出発します。
怪しまれながら辛うじてグリンゴッツに入り込み、正体がバレながらもなんとか分霊箱(ハッフルパフのカップ)を発見し、取ってきました。
逃げ道を塞がれた挙句、銀行にいる護衛用のドラゴンに乗って脱出しましたが、手伝った見返りとしてゴブリンにグリフィンドールの剣を取られてしまっため、再び分霊箱を壊す手段がなくなってしまいました。
ダンブルドアの弟
残りの分霊箱はホグワーツに関連のあるものということがわかっています。
おそらく創設者のロウェナ・レイブンクローに関連のある品。具体的に何なのかはわかりませんが、その一つや、少なくともヒントはホグワーツにあると考えたハリーたち。
しかし、今や、ダンブルドアを殺害したスネイプが校長に就任し、デスイーターたちが教鞭をとっているほどホグワーツも、ヴォルデモートの手に落ちています。
ハリーがホグワーツに入ろうとすれば必ずデスイーターにバレてつかまるようになっているので、ホグワーツへ分霊箱を探しに行くなど自殺行為にも等しいことです。
しかし何としてでも仕事をやり遂げなくてはならないハリーたちは、ホグワーツには入らず近くの村へ姿現しをしてみますが、やはり警報がなってデスイーターたちが現れます。
危機一髪で近くのパブのオーナーに助けられますが、彼は亡くなったダンブルドア前校長の弟、アバーフォースでした。
ハリーが何回もシリウスの鏡の中に見た気がしたダンブルドアの目は、彼のものでした。
そして、マルフォイの館の地下牢で鏡に助けを求めたときにドビーが現れたのも、状況を察知したアバーフォースがドビーを送ってくれたからでした。
彼はハリーに、自分の命を守れ、ヴォルデモートとの戦いは諦めろ、と諭します。兄のアルバス・ダンブルドアの言うことに盲目的に従って、自分の命を投げ出すのが賢明なのか、アルバスはそんなにも信頼に足る男なのか、と。
確かに、ダンブルドアが亡くなってからダンブルドアの過去やハリーにまつわることなど多くのことが明らかになっていく中、正直ハリーはこれまでの親代わりとも思っていたダンブルドアへの揺らぎない信頼がぐらつくことも何度かありました。
しかしここにきて他人からそう問われ、ハリーは改めてダンブルドアへの忠誠の気持ちを新たにしました。
決心を変えない強い気持ちをもったハリーを見たアバーフォースは、彼の店にあるホグワーツへの唯一の秘密の入り口を開きます。
そこから現れたネビルに連れられ、いよいよハリーたちはホグワーツへ侵入します。
もう一度ホグワーツへ
道を抜けると、ホグワーツの隠し部屋にたどりつきました。そこでは、教授となったデスイーターたちからの暴行に抵抗し、追われたダンブルドア軍団の生徒たちが暮らしていました。
生徒達の知恵を借り、もう一つの分霊箱は「レイブンクローの髪飾り」であることがわかりました。そして「必要の部屋」に隠されていることも。
しかしそこでハリーたちがホグワーツにいるのがデスイーターの教授に見つかり、ヴォルデモートを呼ばれてしまいます。
ホグワーツの戦いに向けて
ホグワーツの教授たちはいよいよ決戦の時が近づいているのを察し、生徒たちを家へ帰し、ヴォルデモート到着までにハリーが分霊箱を探す時間を稼ぐため、ヴォルデモートたちをできる限り足止めさせることに決めます。
成年(17歳)に達した生徒は有志で残ってもよいことになり、多くのダンブルドア軍団はホグワーツ城に残って戦いに備えます。
ハリーは必要の部屋でついに分霊箱を発見しましたが、マルフォイと子分のクラッブ、ゴイルたちに攻撃されます。
クラッブが火を放ち始めたせいで最後は部屋が火事になり、ハリーは、借りを返さねばと、マルフォイを助けて逃げます。
この火は悪霊の火と呼ばれる特殊なものだったようで、その力で分霊箱は破壊されます。
ロンとハーマイオニーは、ハリーが2年生の時にトム・リドルの日記をバジリスクの牙で破壊したことを思い出し、二人で秘密の部屋へ行って、先日見つけたまま壊せずにいたハッフルパフのカップの分霊箱(グリンゴッツでみつけたもの)を牙で破壊してきます。
5つの分霊箱を破壊し、残りはあと1つ。それはヴォルデモートの蛇、ナギニでした。
教授陣の尽力もむなしく、ついに恐るべき数のデスイーターたちがバリケードを壊して城に侵入し、ホグワーツの戦いが始まります。学校外から不死鳥の騎士団たちも集まって激戦となります。
ハリーたちもナギニを殺そうとしますがなかなかうまくいかず。
しばらくして、ヴォルデモートから休戦の提案が入ります。
「今から1時間やるので死者を弔え。
そしてハリー・ポッター。お前は俺様のところへ潔く出向いてこい。そうすればこれ以上手出しはしない。魔法族の命の浪費は望むものではない。これ以上お前のために余計な犠牲者をだしたくないのだ。
ただしお前がこなければ容赦なく皆殺しにする」と。
ホールへ行くと、ロンの兄のフレッド、ルーピン先生とその妻のトンクスをはじめ、多くの友人たちが死んでしまっているのが目に入ってきました。ハリーはいたたまれなくなってホールを一人後にし、決心を新たにナギニを殺すため、ヴォルデモートに近づきます。
スネイプの最期
ヴォルデモートとスネイプが話している部屋の前で身を潜めていると、ヴォルデモートがナギニを使ってスネイプを殺し部屋を去っていきました。
「このニワトコの杖は俺に忠実ではない。お前を殺すことでしか杖の忠誠を得られないのだ」と。
(杖には忠誠心があるといわれています。
他人の杖を使っても魔法はかけられますが、パワーが違うよう。
杖の忠誠心を勝ち取るには、持ち主から奪う必要があります。
ヴォルデモートがニワトコの杖をダンブルドアの墓から盗んでいたのを覚えていますよね。ヴォルデモートは、世界最強といわれるニワトコの杖を使っていますがイマイチだそうで、その理由はダンブルドアから盗んだだけで奪ったわけではないからだと考えています。
ダンブルドアを殺害したスネイプに忠誠心が移っているので、そのスネイプを殺すことで自分が忠誠心を得られるという理解です。)
ハリーは、ヴォルデモートが去った部屋へ入りました。
そこには虫の息となったスネイプの姿が。出会ってから7年間ひたすら憎みあってきた男です。
スネイプはハリーを見ると自分の「記憶」を渡します。そして「お前はリリーの目を持っている。僕を見てくれ」といって死んでいきます。
スネイプの記憶と残酷な真実
ハリーは急いで「記憶」を見ます。そこで彼は天地がひっくり返るようなあらゆる真実を知ります。
スネイプはハリーの母であるリリーと幼馴染で、好意を寄せていました。
一緒にホグワーツに入学しましたが、リリーはグリフィンドール、スネイプはスリザリンに分かれてしまいます。
そしてハリーの父となるジェームズたちは日々陰気臭いスネイプをいじめて遊んでいました。ある日、リリーのことを好きだろうとからかわれたときに、あんな「穢れた血(マグル生まれの蔑称)」なんて、と心にもないことを口にしてしまって以来、リリーに口をきいてもらえなくなってしまいます。
そのうち愛するリリーが、大嫌いなジェームズと付き合い始め、結婚していくのを唇を嚙みながら眺めていることしかできないスネイプでした。
卒業後、リリーとジェームズはハリーという息子をもうけて家庭を築いています。
スネイプはヴォルデモートの手下となっていました。
スネイプは、「今年の夏に生まれた男の子が将来ヴォルデモートを脅かす」という予言を何の気なくヴォルデモートに伝えたところ、ヴォルデモートはそれをハリーだと決めつけ、殺すために探し始めました。
驚いたスネイプはダンブルドアに助けを求めます。「リリー一家を守ってください、隠してください。そのかわりに何でもしますから。」と。
しかし結局は、リリーとジェームズはハリーを守って死に、ハリーは額の傷のみで無傷で生存、ヴォルデモートは砕け散ったのでした。
スネイプは現場に直行し、リリーの亡骸を泣きながら抱きしめます。
ヴォルデモート亡き後は、ヴォルデモートの部下でさえも主君の死を認め、「洗脳されていた」とまっとうな世界に戻ってきた者が多かったようです。
スネイプも同様にホグワーツの教授に就任。
ダンブルドアに言われ、「自分の命をかけてハリーを守る。しかしこのことは誰にも知られないようにしてほしい」と誓います。
思えば、1年生のクィディッチで箒から落とされそうになったハリーを呪文で守っていたのもスネイプでした。
ヴォルデモートは、スネイプをスパイと信じていましたが、実はスネイプは二重スパイとして、ダンブルドアに忠誠を誓っていたのです。
6年生の時にダンブルドアを殺したのは、ほかでもないダンブルドアに命令されてのことでした。
どのみち呪いを受けてしまって余命の短いダンブルドアは、自分をあえてスネイプに殺させることで、スネイプに対するヴォルデモートからの信頼を勝ち得ようと考えたのでした。
ハリーをダーズリー家から移送する日程がデスイーターに漏れていたのは、ダンブルドアに言われてスネイプが本当の移送日を伝えたため。
これも、ここで本当の日程を伝えることで、スネイプは機密度の高い情報を流してくれる、とヴォルデモートたちに思わせるためでした。
空中での戦いでは、スネイプのセクタムセンプラ(切り裂き呪文)でジョージは耳を失いましたが、実は目の前のデスイーターの背中を狙ったものの手が震えて外してしまっていたのです…。
ハリーたちが分霊箱探しの旅の途中、家の近くになぜかグリフィンドールの剣が落ちていたのも、スネイプによって届けられたのでした。
そして、ダンブルドアとスネイプの会話で恐ろしい真実を知ります。
それは、ハリーがヴォルデモートに殺されそうになった夜、ハリーは意図せずしてヴォルデモートの7番目の分霊箱になってしまっていたということ。
つまり、ヴォルデモートを破滅させるためには、その前にハリー自身も死ぬ必要があると。
結局ハリーが分霊箱を破壊してきたのは、最後にヴォルデモートをやつけて平和な世界で生きるためではなく、自分が最後に破壊されて平和な世界を遺す、そのための道のりだったのです。
死を受け入れるハリー
記憶を見終わったハリーは、あらゆる真実にショックを受けながらも、最後に残された自分の任務を理解し、受け入れました。
そして、これから自分は死ぬのだということを誰にも話さないと決めます。
ネビルにナギニを殺すよう頼み、自分は殺されるためにヴォルデモートのもとへ向かいます。
これこそが「終わる時」だと気づいたハリーは、道すがら、ダンブルドアの遺品のスニッチ(「終わるときに開く」と書いてある)をとりだします。
ついにスニッチは開き、中からは秘宝の一つ、蘇りの石が現れました。
石の力で、死にゆくハリーの周りに、両親と、シリウス、ルーピン先生が現れます。
ハリーは自分のために亡くなってしまった愛する人々と話し、詫びます。
「誇りに思うよ、ずっとそばにいる」と言う両親たちに見守られながら、ついにヴォルデモートのところに到着。
石は震える手から滑り落ちて両親たちは消えてしまいます。ハリーはついに意を決して死を受け入れ、無抵抗にアバダケダブラの呪文を受けて殺されます。
不思議な世界
ハリーは気づくと不思議な空間にいました。真っ白で明るくて、安全で、清潔な駅舎のような場所。
どこからかダンブルドアもやってきました。
そこで、ハリーはまだ死んでいないといわれます。そのかわり、今殺されたことでハリーの中にあったヴォルデモートの魂は消えた、と。
もう一度あの戦場に戻るか、このまま終わりにするか、自分で選べるのだといわれました。
自ら殺されるために、ハリーはどれほどの勇気を振り絞ったことか。
死を受け入れたハリーには、もうこれ以上怖いことも辛いことも怒らないはず。これで全て終わって、痛みと悲しみに満ちた世界ともお別れのはずでした。
それが、もう一度あの場所へ戻るなんて…あくまでハリーの意思で選んで良いのです。
それでも、ハリーは自分の意思で、もう一回生きることにきめました。
もう一度戦場へ。最後の戦い
今度はハリーは、あのヴォルデモートの呪文を受けたままの場所で倒れていました。死んだふりを続けるハリー。
ハリーの死を確信し、城内に凱旋するヴォルデモート一味。降参を呼びかけますが、ほとんどは抵抗を続けます。
そんな中で、しばらく死んだふりをしていたハリーもタイミングをみつけて再び立ち上がります。
ネビルは最後の分霊箱であるナギニを殺して、ロンの母親は、ヴォルデモートの最強の腹心である魔女のベラトリックスを殺します。
そして最後、ついにハリーはヴォルデモートと2人きりで戦うことになります。二人が同時に呪文を唱えたとき、ヴォルデモートが放った死の呪文はいとも簡単に彼自身に跳ね返り、彼は死にました。
分霊箱はもうないので、もう生き返ることもありません。
ハリーはついに、1歳のときに決まった任務をやりとげたのです。
最強の闇の魔法使いヴォルデモートが、最強のニワトコの杖を手にしたのになぜ呪文が強くかからず、あっけなくハリーに負けてしまったのか。
それは、ヴォルデモートに大きな誤算があったからです。
杖の忠誠を得るには、持ち主から杖を奪う必要はあっても殺す必要はないのです。
ダンブルドアを殺したスネイプを殺しても忠誠を得られなかったのは、ダンブルドアをスネイプが殺す前に、マルフォイがダンブルドアの手から杖を吹き飛ばしていたからです。
ニワトコの杖の忠誠は、その時にダンブルドアからマルフォイに移っていたのです。
そしてマルフォイの杖は、ホグワーツで再会したときにハリーが吹き飛ばしていました。
よって、ニワトコの杖の忠誠はハリーのものだったのです。
戦いが終わり、焼け野原となったホグワーツで、ハリーはこんなものいらない、とそんなニワトコの杖を折って谷に投げ捨ました。
19年後
この本の最後の章は「19年後」です。
背景は、19年後の、ホグワーツ特急が発車しようとしているキングスクロス駅。
ロンはハーマイオニーと、ハリーはジニーと結婚しています。
ロンたちには2人子供がいて、ハリーたちには3人います。
ハリーは長男にジェームズ、長女にリリーと、自分の両親の名前をつけています。
次男の名前は”アルバス・セブルス・ポッター”で、ハリー自身が母親から受け継いだ緑の目を、唯一受け継いでいました。
この日は次男アルバスがホグワーツに入学する日。「スリザリンになったらどうしよう」と心配する息子に、ハリーは語り掛けます。
「アルバス・セブルス。お前はホグワーツの二人の校長の名を継いでいる。ひとり(セブルス・スネイプ)はスリザリン生だった。そして彼は僕の知っている人のなかで最も勇気のある人だった。」
感動的な終わりですよね。
実は、ハリーがスネイプの真実の愛の姿を知ったのは最後の戦いのさなかのごたごたの中だったので、あのあとハリーがそのことを誰かに伝える間もなく、実際にハリーがあの事実をどのように認識したのか、しっかりと描写されている部分が物語中にはなかったのです。
最後の章で、19年を経て、初めてハリーからスネイプへの気持ち、彼の愛と行動をついに正しく享受したということがわかり、ほっとしました。
そしてこの終わりの章は、「ハリーポッターと呪いの子」という舞台につながっています。まさにその舞台の最初の章はこのシーン。
今度の主役は次男のアルバスです。
これまた、ハリーの時代からの伏線が続いており、面白いので見てほしいです!