脱獄犯に注意
3年生への進級を目前に控えた夏休み、ハリーは再びダーズリー家で問題を起こしてしまいました。
訪ねてきた親戚のおばさんに両親を侮辱され、怒ったハリーはおばさんを風船のように膨らませて空に飛ばしてしまったのです。(こんな現実世界ではありえない設定まで、ここまで綿密に世界観が練られているとまじめに語れてしまう…😂)
「未成年の学校外での魔法使用禁止」という法律に背いたとして、その場で魔法省から退学を通告され、怒りがおさまらないハリーは荷物をまとめて家を飛び出します。
道を歩いていると、黒い大きな犬が茂みからこっちを見ていたような。
もう一度確認しようとしたところに、巨大なナイトバス(夜の騎士バスと訳されています。NightとKnightですね)が到着します。迷子の魔法使いを拾ってくれるバスで、それに乗って漏れ鍋(宿泊もできる魔法使いのたまり場?ホテル的な?)へ。
そこにはロン一家もハーマイオニーもいました。その場で魔法大臣とも面会することになり、魔法を使ったことを咎められるのかと思ったら、「退学なんてしなくていい。それより君が安全で本当によかった。もう出歩かないように」と不思議なくらい優しく謎の扱いを受けます。
この頃巷ではシリウス・ブラックという凶悪犯がアズカバンという魔法使いの牢獄から脱走したというニュースでもちきり。
シリウスはヴォルデモートの弟子で、13年前にハリーの両親の居場所を主君に教えてハリーの両親を死に追いやり、その後友人やマグル13人まで殺したとされる人物でした。
アズカバンと言えば脱獄不可能で知られている魔法使いの収監所。どんな執念を持って逃げ出したのでしょう。
新学期が始まる前にハリーはロンのお父さんに呼ばれ、シリウスは、ハリーを殺せばヴォルデモートが復活すると信じているので、ハリーを殺すために脱獄したのだと聞かされます。
だからあんなに魔法大臣もハリーの身を心配していたのですね。「今後何を聞いても、絶対にシリウスを探しに行かないと約束してくれ。」と言われ、「僕を殺そうとしている人をこっちから探すわけないじゃないですか」と不思議そうなハリー。
(ロンの両親も、本当の息子のように愛情を注いでくれますね。ほほえましい。)
ディメンターの恐怖
新学期、ホグワーツに戻る汽車に揺られていると、汽車が突然がたんと止まりました。
窓は凍りだし、みんなが何ごとかと思っている中、ハリーのコンパートメントの扉が開き、入ってきたディメンター(吸魂鬼)にハリーは攻撃され気を失います。
危ういところを、同じコンパートメントに乗り合わせた新任教授であるルーピン先生に助けられますが、気を失う前に、自分にだけ聞こえた女性の悲鳴も気になりハリーは楽しい気分になれません。
(ハリーの災難っていつも新学年始まる前の夏休みからスタートしてるんですね💦)
どうやら、ディメンターとはアズカバンの看守であり、アズカバンを脱獄したシリウスブラックを追っているそう。囚人はディメンターのキスを受け、魂を吸い取られて絶命するもの。
シリウスが捕まっていない今年度は、防犯のためにディメンターがホグワーツの周りにも配置されるということです。
クィディッチの試合中にも、空高く飛行していたハリーが空中でディメンターに攻撃され、箒から落下する事故も起こりました。
本来、囚人の命を奪うために存在するディメンターが、罪もない学生を攻撃するなどあるまじきことで先生方も怒り心頭ですが、そもそもなぜハリーだけがあんなにディメンターに狙われては気を失ってしまうのでしょう。
初日にディメンターを退治してくれたルーピン先生のもとを訪ね、教えを請います。
「ハリー、お前が強く影響を受けてしまうのは、お前の過去に誰も経験したことのないような悲しみがあるからだ。
ディメンターは恐怖を餌に幸せを貪る。幸せな思い出を胸に、守護呪文を唱えて追い払うんだ。まだ君の学年ではとてもできないような難しい魔法だ。」
それでもハリーはこの日からルーピン先生の個人レッスンを受け始め、なんとかディメンターを追い払えるようになっていきます。
復讐を誓う
ホグワーツでは、3年生になると保護者の許可があれば週末にホグズミート村(世界で唯一の魔法使いしかいない村)へ行くことを許可されています。
もちろんバーノンおじさんに許可をもらえなかったハリーが留守番しているところに、ロンの兄でいたずら好きの双子フレッドとジョージがきて、忍びの地図(ホグワーツ城の秘密の抜け道や人の動きが全てわかる地図)を渡します。
忍びの地図と透明マントを使い、ハリーはホグズミートにでかけることに成功しますが、そこでハリーは、シリウスは学生時代にハリーの父親の大親友であり、ハリーの名付け親ですらあったということを知りました。
親友を裏切って売ったシリウスに対して復讐心を燃やし、ロンの父親との約束を忘れ、絶対に探し出して殺してやると誓うのです。
気がかりな占い
ところで、3年生になって新しく始まった授業として、占い学という科目があります。ティーカップに残った紅茶の葉の形から運命を占ったりするのですが、ハリーのカップを見たトレローニー教授は「恐ろしいグリム(死神とされる黒い犬)が取り付いている」といいます。
ハリーは家を飛び出してきた朝に見かけた黒い犬を思い出してドキッとしますが、
教授といい内容といい胡散臭い科目だと、ハーマイオニーをはじめ生徒たちはあまり本気にしていません。
しかしある日、ハリーが一人で占い学の教室に入ると、突然別人のようになったトレローニー先生に腕をつかまれます。
先生は聞いたこともないような声で「今宵、闇の帝王(ヴォルデモートのこと)のしもべが再び主君のもとへ馳せ参ずる」と予言します。
次の瞬間に教授は我に帰りましたが、今のことを全く覚えていませんでした。
怖くなったハリーは逃げるように教室を後にしますが、予言通り、その夜ついに事件は起こります。
シリウスブラックと対面
その夜庭園を歩いていると、突然黒い大きな犬が走ってきてロンにかみつき、そのままロンを大きな木の下の穴の中へ引っ張っていきます。
ハリーとハーマイオニーも後を追って穴に入ると、そこは古い屋敷の中へつながっていました。
そこにいたのは他でもないシリウス・ブラック。黒い犬に化けていたのでした。
しかし、ハリーの命を狙っているはずのシリウスでしたが、ハリーを攻撃してきません。それよりもロンが常に抱いているペットのねずみを渡せと言ってきます。
しかし、ハリーはそんなことよりも、両親を裏切ったシリウスへの怒りでいっぱい。殺してやろうと杖を向けます。
そこへ、ルーピン先生が現れました。よかった、これでシリウスを捕まえてもらえる、と安堵した3人でしたが、あろうことか先生は魔法でハリーの杖を吹き飛ばし、シリウスと抱き合いました。
信頼していたルーピン先生がシリウスとグルだった⁉と唖然とするハリーたちでしたが、ルーピン先生の説明で予想外の真実が明らかになります。
13年間の誤解
シリウスが要求していたロンのねずみは、ピーター・ぺティグリューという人間が十三年間化けていたもので、魔法をかけると本当にネズミは汚らしい男に戻りました。
(伏線として、映画の中でもちゃんと、アニメーガス(自分の意思で動物に化ける)と狼人間(意思と関係なく満月の日に狼になってしまう)の違いについて習う授業がありました。)
学生時代、ハリーの父親ジェームズとシリウス、ルーピン、ピーターは仲良し4人組でしたが、卒業後、ピーターはヴォルデモートの弟子となってしまいました。
ヴォルデモートは予言で、「この夏に生まれる、闇の帝王に三度あらがった者たちの間に生まれる子供が、将来ヴォルデモートを脅かす。どちらか片方が生きる限り、他方は生きられない。」と聞き、それがハリーのことであると理解して、赤ちゃんのうちにハリーを殺そうと躍起になっていたのでした。(今は余談ですが、実はこの条件に当てはまる人物はもう一人いて、それがハリーと同じ寮のメンバーでもあるネビル・ロングボトムだったのです。)
それを知って身を隠していたハリーの一家の居場所を主君のヴォルデモートに教えたのがこのピーター。
つまり、親友を売ってヴォルデモートに手を貸し、多くのマグルを殺害するなどの、シリウスがしたと思われていた悪行の全てはピーターのものでした。
さらに、13年前にマグルを殺害した時からネズミに化け続け、自分自身もシリウスに殺されたふりをしていたのです。
実際はシリウスは冤罪で何も悪いことはしていませんでした。
今回の脱獄はピーターへ復讐し、代わりにアズカバンへ突き出すことで自分の無実を証明するためだったのです。
罪なきシリウスは本来ハリーの名付け親(後見人)。これで罪が晴れたら一緒に暮らそうと提案します。
惜しくも長年の夢破れる
ところが6人で城へ戻る途中、満月があらわれます。実は狼男であったルーピン先生はそこで狼になってしまい、どさくさにまぎれてピーターは逃亡します。
シリウスを探している大量のディメンターや、狼になって我を忘れているルーピン先生からの攻撃をかわしながら、かろうじてハリーたちは逃げ切ります。
(ちなみに、ここでも居合わせたスネイプ先生が助けようとしてくれます。実際には狼人間相手に力及ばずですが、急に狼になったルーピン先生に対し、咄嗟にハリーたちを自分の後ろに匿って守ろうとします。かっこよすぎる!)
ピーターを見失ったため証拠を失ったシリウスは無罪を証明できなくなり、また逃亡生活を継続することになりました。
ハリーと暮らす夢はお預けとして、シリウスはハリーたちの手を借りてホグワーツからの逃亡に成功します。
ハリーたちが大好きだったルーピン先生は、狼人間であることがばれてしまったため、ダンブルドアに迷惑をかけないために辞職してしまいます。
そこで明らかになることですが、ハリーが手に入れた忍びの地図は、若かりしルーピン先生とシリウス、ジェームズ、ピーターが4人で作ったものでした。
小さいころに狼人間に嚙みつかれたことから自らも狼人間となってしまったルーピン先生のために、親友であるシリウスたちは、アニメーガスとして自分たちも動物となり、満月の夜にはともに動物となって過ごしたりしていたのです。ハリーが何度かみかけた黒い犬は、恐怖のグリムなどではなく、脱獄したシリウスが化けて様子を見に来ていたものでした。
学年末、ハリーのところにシリウスから、ハリーがずっと欲しかった最新型の箒が届きます。
安全にシリウスが逃げ延びたこともわかり、安心するハリー達です。